「美しいもの」
それはいったい何だろうか。
本当のところ、私たちにも、わからない。
誰かが言ったからでもなく、
たしかに自分の中で、その美しさに言葉をうしない、
忘れてしまわぬように、直感の源を探し始めていたりもする。
高価や豪華が、美しさのすべてとは限らない。
誠意を感じさせる質のありのままを、数量ばかりでは測れない。
だけど、軽井沢の森がそうであるように、
美しいものは、
毎日そばに在るだけで、言葉はなくとも、
質実で質素な美しさを語りかけてくれる。
私たちは本当にそれをわかりたくて、
そこはかとなく美しいと感じるものに、もう一度、心を留めてみたくなりました。
Hans J Wegner
CH26
with CARL HANSEN & SON
呼吸をする。
木も森も、人も。
建築や空間ということを考えるとき、森の光やあたたかさを暮らしに取り込むのは、窓をどう開くかだけではなく、森から生まれてきた家具そのものの美しさが、森の光とこれからも、どう呼応するかということも、実はとても大切なのかもしれない。
木そのものが呼吸をくりかえし、森へ帰ったかのように
光を蓄え、人とふれて、
飴色に艶を増していくHans J WegnerのCH26は、
デンマークでつくられて、
日本の森にあってもなお、呼吸を続けている。
人のからだを包みもするし、
仕事へも向かわせるその曲線の美しさには、
どこか手描きでしか描けなかった時代の
人の温度が引き継がれているように思う。
それがどの角度で?どの太さで?と科学するよりも、
写真に撮って眺めてみるよりも、
何度も手にふれてみるほか、
わからないものがあるような気さえする。
森の呼吸を知る人の手が生み出した家具は、
森の光と呼応し、
私たちの呼吸を和らげてくれるのではないだろうか。
それも含めて、ひとつの建築や空間であり、
実は意図してデザインし尽くすことはできないのかもしれない。
だけど、そこへと意識を向かわせてくれる美しさを、
私たちは忘れないようにしていたいと思う。