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軽井沢 美しさの手帖03
林友子さんの土と木、光

「美しいもの」

それはいったい何だろうか。


本当のところ、私たちにも、わからない。

誰かが言ったからでもなく、

たしかに自分の中で、その美しさに言葉をうしない、

忘れてしまわぬように、直感の源を探し始めていたりもする。


高価や豪華が、美しさのすべてとは限らない。

誠意を感じさせる質のありのままを、数量ばかりでは測れない。


だけど、軽井沢の森がそうであるように、

美しいものは、

毎日そばに在るだけで、言葉はなくとも、

質実で質素な美しさを語りかけてくれる。


私たちは本当にそれをわかりたくて、

そこはかとなく美しいと感じるものに、もう一度、心を留めてみたくなりました。

 

 

土と木の作家
林友子(はやし・ゆうこ)さんの
木額と土の美

 

 

 

美しい室礼

平安時代に、宴や儀式に際して、
建具や調度品を装飾したことに由来し、

生活の場をととのえることを意味する「室礼(しつらい)」。

 

日本古来の美意識が宿るおもてなしの心とも言える、その行いは、
季節に合わせて、床の間を美しく見立てる文化にも、つながっている。

 

今では少なくなってしまった床の間という建築様式。

ただ、こうして作品が、ひとつの床の間をつくり出すこともある。

 

作家の林友子さんの作品に
使われているのは、土と木。

 

刻一刻と時計の針が進むごとに、
森の光が変われば、
林さんの木額に宿した土が映し出す光も、またうつろう。

一瞬かぎりの時を重ねて、醸成していく。

 

土であるから、割れないように、

何層にも薄く塗り重ねられてるのだろう。

土の粒子が深層からも光り輝くように感じられる。

 

使われている土は、日本の土。

その粒子は、何万年もの時を経て、今ここで光を得ているのだろうか。

 

土と木。

それは、私たちが踏み固めている大地でもある。

ひとつの四角の中に、

作風や構図、物語をつけることをあえてせず、

時代を越えた大地、土と木の美しさそのものが、

なにかを問いかける。

 

西欧の豪華な額縁と絵画の関係とは、起源を異にする美しさ。

床の間で、生活の調度品に、花を見立てる。

そんな日本人の美意識を、教えられているように思う。